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今年も10月となり、東北も特定の河川を除いて禁漁を迎えた。フライフィッシャーの宿としても、数ヶ月に及ぶ営業の疲労と安全無事にシーズンを終えたことで大きなため息が出てしまう。しかし、これからの秋が北海道のドライシーズン。サケ釣りや上りアメマス釣りも広く知られるようになり、どうやら秋の北海道愛好者はそれほど減っていないようだ。自分はもうかれこれ15年にもなるだろうか。秋の紅葉の中で遊ぶドライの釣り、そしてライズの釣りは、いくらフライ歴を重ねても楽しいものだ。今回で自分の2007年の釣行記は最後となるが、最後を飾るにふさわしい時と場所だった。

飽きない程度に渓魚の顔を見て、一休みでのどの渇きを潤し、お腹が空いておにぎりをほおばる。これこそ幸せの絶頂、至福の時ではないだろうか。シーズン中にも嫁と釣り歩く機会は数回程度なのに、北海道では毎日のようにてくてくと川をトレッキング。不思議なことに同じ川、同じ区間を歩いても、あまり飽きない。北海道の釣りの魔法のようなものにかかってしまっているみたいであった。

苫小牧から道東に一直線で、会津を出発した翌日の夕方前には目的地へ到着。何とも信じられない素早さ。阿寒川では40オーバーのニジマスを狙ったが、夢破れてしまった。変わりのお土産に川岸で天然のエノキダケをたんまりと収穫して、その日の夜のご馳走とする。朝は残しておいた出汁で贅沢な雑炊を。こんな日々なら飽きるはずがない!

         

         

西別川では、バイカモがゆらぎクレソンが繁茂する「フライマンのあの世」とも呼べる風景の中で、一心不乱に五目釣りを楽しむ。あっという間の時間だ。西別川の五目とは、ヤマメ、イワナ、ニジマス、オショロコマ、アメマスでめでたく達成となる。希少種のブルックが入っても構わないが、今では滅多にお目にかかれない。ブルックよりもイワナをくわえたミンクの方が固体は圧倒的に多そうだ。クレソンの若芽を50本ほど摘んで、ラムしゃぶでいただく。場合によってはエノキダケとも合体し、夕食の豪華さは頂点を極めたりもした。

         

道東から二セコに一気に移動。もう数年馴染んだエリアだが、どうしたことか魚が極端に少なくなっている。驚きと戸惑いを隠せないが、日程にゆとりがあるのでここは再度道東へトンボ帰りを決行した。ニセコでは34日のロスであったが、行ったり来たりも旅のうち。おいしいものを食べて、良い湯に浸かって、それはそれでいいじゃないか。道すがら帯広の豚丼、伊達の新鮮なにぎり、釧路名物のザンたれ定食と、一様に口に入れてお腹は満足、いや超満足。特にザンたれの量には後半持つ箸が止まるほどだった。

          

          

道東に戻ってからは湖のドライが釣りのメニューに加わった。秋は湖のドライには最高なので良型ニジマスの期待も大きく大きく膨らむが、そう簡単には事は運ばない。湖水温度と気温と波と風がバランス良く噛み合えば良いのだが、そんな日は週に13日。午前なのか午後なのか、行ってみないと分からないのが現実。天気図である程度は推測出来たりもするのだが、犬とキャンプ場暮らしののんびり気分が優先して、「行って駄目なら駄目で湖岸で日向ぼっこ作戦」に決まり。それほど風裏を探すこともせずに、悠長に時を過ごしていた。これはなかなか出来ないぞ。

湖のドライは実にスリリング。釣れていなくてもドキドキする状態は、ライズを目の前にしたビギナーの心理状態にそっくりだ。吸い込み型のライズが浮かべてある自分のドライフライに近づいてくる。チョボ、チョボ、チョボ、少し遠ざかってチョボ、チョボ、再びこちらに向かって来てチョボ、チョボ、チョボ。ドキドキしないフライマンがいるだろうか。そしてとうとうチョボッ! 自分のフライを吸い込んだ瞬間に興奮は絶頂に達する。そして、123、ダー!!! と突っ走るニジマス。ジェット機の飛行機雲のように、鮮明に記憶に残る残像は痛快な狩り。弟子屈の鱒やオーナー曰く、湖のドライで狙うニジマスは、ライズと言う目印を探して歩くハンティングそのもの、と。

結果、小河川に上がろうとする上りアメマスをドライで数尾キャッチ、3540センチ。ドライフライパターンはビートル、ブラックカディス、コンドルのプードル。ニジマスは掛け損じが数尾、ジェット機ダッシュが2尾、ネットインはならず。立派なウグイ5尾、無情にもバラシ無し。湖のコンディションが悪くなったので静かなワンドでヒメマスとたわむれて数尾をキャッチ。一人静かにロッドを持ち、ドライフライを浮かべて湖に刺さり、ああでもないこうでもないとぶつぶつ言いながらライズと駆け引きをする。バッキングラインまでが引き出される瞬間、かなり焦ります。あなたがもしドライ好きのフライマンならば、是非とも体験せずにはいられないでしょう。釣行の計画に盛り込むことを強くおすすめします。

この釣行記をご覧の皆さんも、北海道のエキサイティングなドライの釣り、一度いかがでしょうか。北海道は川も湖も、タックル次第でもっともっと極上のフィールドに化けていきますよ。阿寒川のホテル裏で沈めて釣る50オーバーの成魚放流のニジマスもいいでしょう。カーブごとにたむろっているアメマスをエッグパターンで数釣るのもいいでしょう。このように書くと怒られてしまいますが、少なくとも自分と嫁には、「ドライオンリー」が最も楽しい釣りであることに変わりはありません。そして釣れても釣れなくても、本当に楽しい時間を過ごしています。

      
立派なニジマスは、宿のお客さんが阿寒川でキャッチした50オーバー。本当はこの姿を拝みたかった!
(レポート:T氏)

2007の記憶 秋、北海道